【 オルハウゼン 】 なぜオルハウゼンなのか ~ビリヤードテーブルの構造~

科学技術ジャーナルNov.1999 スポーツを科学するNo.20より
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最も精密なスポーツ用具のひとつ=ビリヤードテーブル
ビリヤードは頭脳と神経のスポーツであるといわれています。
一流プレーヤーの華麗なショットは、一見するとさながらマジックのようであり、見る者を魅了するのですが、
それらはすべて緻密な計算と抜群の集中力が生み出すものなのです。
ところで、ビリヤードというゲームは、精巧に作られたビリヤードテーブルを前提として成り立っています。
例えば、テーブル面が水平でなかったり凹凸があるような場合には、緻密な計算によるプランも正確なショットも
無意味となるでしょう。頭脳と神経のスポーツであればこそ、テーブルにも精緻な造りが要求されるのは当然であり、
それゆえ、ビリヤードテーブルは今日のスポーツ界において最も精密なスポーツ用具のひとつとされています。
全てを支えるタフなフレーム
ビリヤードテーブルの土台とも言うべきフレーム(枠組み)は、木材を金属で補強しながら組み立てられます。
フレームは、およそ400キログラムもあるテーブルそれ自体を支えると共に、テーブル面のレベルを確実に固定させる
基盤として十分な強度が必要です。逆に言えば、人間の体重くらいの重圧で傾いてしまうようなものは
単なるオモチャであって、ビリヤードテーブルとは呼べません。
極限の水平
石材(主にスレート)にクロス(ラシャ)を張り巡らせたテーブル面は、ビリヤードテーブルの生命ですから、いうまでもなく、完全な水平が保たれていることが必要で、わずかな凹凸すら許されません。原材料である天然スレートは、まず平板に切断し、コンピューター管理のもとで寸法通りにカットします。その後、スレートの表面を磨き上げて完璧な水平と滑らかさに仕上げるのですが、この仕上げの段階は、意外にも、ほとんど手作業で行われています。テーブルの精緻な仕上げにとって熟練した技術は不可欠であり、例えば、レベルの精度を1000分の1インチ未満としているイタリアンスレートも、コンピューター駆使した最先端テクノロジーと熟練工の技能との融合によって生まれるのです。また、スレートの上に張られているクロスは、ボールが直接ふれる部分ですから、ピンと張って手足のむらを防止すると共に日頃のメンテナンスによって水平で滑らかな面を保たなければなりません。
たかがゴム、されどゴム。
テーブルの外枠の内側に取り付けられるクッションは、ボールを規則的かつ
正確に反射する役割を担っており、テーブル面と並んでビリヤードテーブルの
もう一つの生命であるといわれています。 木製のレールに密着させた
三角柱型のラバーをクロスで覆った構造をしているのですが、
ポイントとなるのはラバーです。今日のビリヤードテーブル製造業界では、
このクッションラバーへの技術的関心が集中し、各メーカーの技術競争の
中心となっていると言っても過言ではないでしょう。まず、ラバーの形状でさえ、
単純には決まりません。使用するラバー固有の弾性を考慮しつつ、
力学的見地からベストの型を作る必要があります(図参照)。
次にラバーの質が重要な問題となります。ボールを正確に反射するというクッションの機能に照らせば、少なくとも
新しいラバーは均一的な弾性を保っていることが絶対条件なのですが、この課題は比較的容易に解決します。
ただ、ラバーはその性質上、製造当初の状態を維持することが困難です。古くなったラバーは外見上の変化は
見られなくても、その弾性は少しずつ弱くなる傾向があります。再三述べてきたように、ビリヤードテーブルは非常に
デリケートなものですから、ラバーの微妙な劣化がプレーに大きな影響を及ぼしかねないのです。
他方でビリヤードテーブルは、一般に長い年月使用されるべきものですから、数年でラバーの弾性が弱ってしまうのは
ユーザーにとって大変困るわけです。 クッションラバーをめぐるメーカー各社の腐心も、まさにその点にあるのです。
そこでいかにラバーの性質を維持するかという取り組みがなされてきたのですが、近年では特殊な製造技術を導入する
ことにより、5年10年経っても元の弾性を失わない商品を開発し、この困難を克服したものもあります(表参照)。
非常に変質しやすいラバーの性質を考え合わせれば、驚くべき技術・性能といえるでしょう。
常に進化を追求しなければならない
ビリヤードは、今日ではスポーツとして一般に認知されるようになり、大きな国際大会も盛んに催されるようになりました。
今後ビリヤードがより普及していくためには、テーブルも常に進化を追求しなければならないでしょう。